脳脊髄液減少症 低髄液圧症候群
2010/02/10
交通事故のむち打ち症やスポーツ中の頚部捻挫、頚部打撲時に、発症することで話題になっている疾患です。
脳や脊髄はくも膜、硬膜という重なった膜で覆われ、その中に脳脊髄液が一定の量、一定の圧を保ちながら満たされています。そのクモ膜、硬膜が上記したような首、背中、腰への衝撃により破れ、それが修復されずに破損したままの状態が持続し、それによって脳脊髄液が持続的に漏出して脳脊髄液の減少や圧の低下が起こり、それによりさまざまな症状が出て、患者さんを苦しめるのを脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)と呼んでいます。
むち打ち症や背部への外傷により一時的のそこでの髄液圧が上昇して、ちょうど津波のように下へ波動が伝わり、腰部の硬膜は比較的薄いため、腰部でクモ膜、硬膜が破損してそこから髄液の持続的な漏出(髄液漏といいます)が起こることが多いとされています。また、外傷の既往がなく原因が不明なものも多く存在します。
症状は激しい頭痛がまず起こり、これは臥床しているとそれほどでもないのですが、立ったり、座っていたり頭の位置が高い場合に、頭の周囲の髄液が減少し髄液圧が低下して、ちょうど脳を周囲から引っ張る様な状態となり、増強するのが特徴です(起立性頭痛)。そして、多くの場合鎮痛薬がこの頭痛には効きません。その他、肩のこり、肩甲部の痛み、吐き気、めまい、ふらつき、耳鳴り、眼球の動きの麻痺、手のしびれ、うつ状態、不眠などの多彩な症状が現れ、仕事、社会生活に重大な支障をきたします。
診断は、症状として起立性頭痛やその他の症状があり、さらに放射性同位元素を用いた脳槽シンチグラフィーという検査で、髄液の漏出が確認できれば間違いありません。MRIでも脳硬膜の肥厚がみられることがありますが、確定診断にはなりません。また、硬膜外ブロックの要領で硬膜外腔に生理食塩水を少し多めに注入して、症状がすぐに取れれば脳脊髄液減少症の可能性は非常に大きいです。
治療は初期の硬膜の破損の小さいものは安静や点滴で自然に治癒することが多いです。古くから知られている腰椎麻酔後の頭痛がまさしくこの状態です。若い女性に多く発症します。腰椎麻酔後の頭痛は刺入する針を細くすることで防げ、現在では専門の麻酔医は25~27ゲージの極細針しか使用しないので、脳脊髄液のもれは極少なくまた損傷の穴も小さいためすぐ塞がり、腰椎麻酔後の頭痛は劇的に減少しています。
しかし、外傷でおこる硬膜の破損は針の刺入にくらべてずっと大きく、髄液の漏出が持続する場合が多いとされています。それらの場合に症状が持続する場合にはブラッドパッチといって患者さん自身の血液を無菌的に採血して、それを硬膜外ブロックを行う要領で10~20ml髄液漏のある場所の硬膜外腔に注入して血液を接着剤の代わりに使い、硬膜の破損部位を塞ぐ方法が行われます。血液は数日で消失しますのでその期間に破損部位が癒着して修復しなければ効果はありません。今のところこのブラッドパッチが一番有効な方法とされており、1回で無効ならば複数回行われることも多いです。
ただし、髄液漏が修復されても症状がしばらく持続することもよくありますが、段々と軽くなっていくことが多いです。しかしブラッドパッチで完全な修復ができずに症状が持続して長い間苦しんでいる患者さんがいらっしゃることも事実です。
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