消炎鎮痛薬 NSAIDs
2010/01/12
通常、あらゆる診療科においても痛みがあればとりあえず痛み止めを処方されます。この痛み止めは消炎鎮痛薬、正式には非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)と呼ばれ、バファリン、ロキソニン、ボルタレン、ハイペン、ポンタール等たくさんあります。その作用機序はアラキドン酸カスケードというさまざまな物質を産生するメカニズムに作用して、まず炎症によって産生される物質であるブラジキニンを抑制して鎮痛、抗炎症、解熱作用を発揮します(これをCOX-2阻害作用といいます)。ただ、この薬は同時に胃粘膜血流保護作用や腎臓の血流維持作用を有するプロスタグランジンE2やプロスタグランジンI2も抑制して(これをCOX-1阻害作用といいます)、胃潰瘍や胃出血、腎機能低下作用をおこすことがあります。これはいくら胃薬(ムコスタ、マーズレン、セルベックス、ガスター等たくさんあります)を同時に服用してもほとんど防御できません(しかし、日本ではほとんどの医師は知っているのか知らないのか胃薬を同時に処方します。ちなみにアメリカでは原則的に胃薬は一切出さないようです)。また、非経口的な座薬なども結局は血流によって胃や腎臓に作用しますのでこれらの副作用を消すことはできません。ただしミソプロストール、スクラルファート、エンプロスチルという胃薬は消炎鎮痛薬のCOX-1阻害作用作用から胃粘膜を守る事がわかっていますが、保険診療上これらの薬は消炎鎮痛薬服用により薬剤性胃潰瘍になった時に初めて使用が認められています。したがって消炎鎮痛薬は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腎機能低下の方には使用しないことが大切です。
ところが、最近、COX-2阻害作用にくらべてCOX-1阻害作用が少ない消炎鎮痛薬がでてきました。すなわちそれらは痛みには効くが胃腸障害や腎機能障害は起こしにくいのです。ハイペン、セレコックスなどがその薬です。これだと胃が弱い人や腎機能が低下している人にも比較的投与しやすいのですが、COX-1阻害作用が全くないわけではありませんのでその点は注意が必要です。特にセレコックスはCOX-2阻害作用に比べてCOX-1阻害作用が極端に弱く慢性関節リウマチなどの長期の消炎鎮痛薬の投与が必要な患者さんにも胃腸障害がほとんどでないことが多いです。
さらにアセトアミノフェン(主に小児の解熱薬に使用される、アンヒバやピリナジンやカロナールのことです。COX-3阻害薬と言う人もいます)は胃腸障害、腎障害をおこしにくい鎮痛薬として知られ、現在アメリカでは鎮痛薬の多く(約80%)はアセトアミノフェンが使用されています。しかしながら大人のある程度強い痛みに効くには1日に3g程度の量を内服することが必要で、日本以外の国ではその程度の量のアセトアミノフェンが使用されています。しかし、最近まで日本では一般的にアセトアミノフェンは1.5gまでしか服用が許されておらず、せっかく副作用が少ない(9g以上の大量使用やアルコール大量摂取者で肝機能障害を起こす場合が報告されています)薬も量が少なければ、痛みに対する作用も弱く、使用しにくかったのですが最近やっと日本でも外国なみの投与量が認められました。もう一つのアセトアミノフェンの利点は他の薬に比べて相当安価であることです。
ただし、消炎鎮痛薬は軽度から中等度の炎症を有する痛みには効果がありますが、強い痛みや特に神経痛にはほとんど効果がない場合が多いのです。
そのような場合、痛みの治療を専門とするペインクリニック医は、鎮痛補助薬として、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などを加えたり、中枢性鎮痛薬(ケタミン、また保険診療上、癌性疼痛以外にも使用できる麻薬性の鎮痛薬である塩酸モルヒネ、リン酸コデインを用いられることも徐々に増えています。麻薬性鎮痛薬についてはトピックスに既述)やナトリウムチャンネル阻害薬のメキシレチン、さらに漢方の知識に詳しい医師は漢方薬を使用したりします。
これら、いろいろの鎮痛薬がありますので、患者さんも安易に消炎鎮痛薬を長期にわたり使用し続けることに対しては十分注意され、その他の鎮痛薬の知識も豊富な医師に診てもらうことも重要だと思います。
2010年11月より末梢神経痛に対してリリカ(プレガバリン)という全く新しい作用の神経痛治療薬が出ました(トピックスに詳述)。これは有効率60%以上という非常によく効く薬です。慢性の神経痛患者さんにとって朗報です。さらに2011年8月よりトラムセット配合錠(トラマドールとアセトアミノフェンの合剤)も出され慢性痛にかなりの効果を発揮しています。
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