肘の関節では前腕の屈筋腱（手首、指を曲げる筋の腱）の付着部は内側上顆に付着し、前腕の伸筋腱（手首、指を伸ばす筋の腱）の付着部は外側上顆に付着しており、それらを引っ張る慢性の力が過剰に加わり続けると、その腱や滑膜に炎症が起き痛みが生じ、また腫れることはまずありませんが、熱を持ちます。それを上腕骨内側上顆炎　上腕骨外側上顆炎と呼びます。
　外側上顆炎はテニス肘ともよばれますが、それはテニスでのバックハンドストロークが誘因になる場合があるからです。それ以外にはテニスとは全く関係ない中年の女性に多く発症します。また、内側上顆炎は外側上顆炎より発生頻度は少ないですが、ゴルフで発症することが比較的目立つことからゴルフ肘とも呼ばれていまが、私の経験上ゴルフで発症したのは外側上顆炎でした。
　外側上顆炎の症状は運動時や作業時の肘の外側の外側上顆部の痛みで、特に肘を伸ばした状態で重いものを持って手首を反らせたりすると痛みが誘発されます。また、外側上顆部を圧迫すれば上腕と前腕に放散する痛みを感じます。また、痛い部分をさわると炎症のため熱を持っているのが患者さんでもすぐわかります。通常、よほど重症の場合以外はレントゲンでは異常はありません。
　内側上顆炎の症状はやはり運動時や作業時の肘の内側の内側上顆部の痛みです。また、内側上顆部を圧迫すれば痛みが誘発されます。こちらもレントゲンで異常はまずありません。
　治療法は、どちらも一種の腱鞘炎、つまり使い痛みですので、局所の安静がまず第一です。症状に合わせて、消炎鎮痛薬やハップ剤を使用し、外側上顆炎ではテニスエルボーバンドが有用です。内側上顆炎では作業時などにはサポーターを着用した方がよいようです。消炎鎮痛薬はある程度の期間続けて服用すると胃腸障害を起こすことが大きな欠点ですが、最近は胃腸障害の少ないハイペンやセレコックスといったＣＯＸ２阻害薬（トピックス、消炎鎮痛薬で既述）が使用出来ますので、比較的連用が容易になったと思います。
　以上述べた保存的治療で痛みが取れない場合、圧痛部に局所麻酔薬とステロイドを混合した薬液をトリガーポイント注射します。ただし同じ個所へのこの注射はせいぜい２～３回にとどめるべきで、あまり回数が多くなるとむしろ痛みを増強することがありますので注意が必要です。
　痛みが鎮静化した後は、手関節の背屈筋のストレッチや筋力トレーニングを行います。これは内、外側上顆炎の再発予防になります。
　これらの上腕骨上顆炎は手を過剰に使用する方に非常によく見られる疾患で、皆さんも肘の内側、外側の痛みや熱感を感じたら決して無理をせず、まず安静を保つことが何より大切です。