http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_list1/contents_type=1
2024-03-19T11:30:03+09:00
RCMS
http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=56
2023-11-07T00:00:00+09:00
院長所用のため、3月26日(火曜)は午前10時30分より診療いたします。
午後は通常診療です。ご留意ください。
藤垣クリニック 院長
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=7
2020-09-26T00:00:00+09:00
帯状疱疹はヘルペスウィルス(小児がかかる水疱瘡のウィルスと同じもの)の感染でおこり、多くは壮年期から老年期に発症する痛みと皮疹の疾患で、一生のうち5人に1人はこの病気にかかると言われています。帯状疱疹は頭から足の先までどこの神経でも、その神経にそってウィルスによる神経炎を起こし、体の左右どちらか片側に神経痛を生じます(神経の走行にそって湿疹、水疱、痛みが帯状にでますのでその呼び名になったのです)。その痛みは激痛の場合も多く、ペインクリニック治療の対象となります。またその神経にそって皮疹、水疱ができますが、これらの皮膚症状は自然治癒します。すなわち帯状疱疹は皮膚の疾患というより痛みの疾患なのです。
なによりも重要な点はその神経痛を早く治すことにつきます。というのは帯状疱疹の痛みが2~3か月を過ぎても痛み続ける場合には、ヘルペスウィルスが起こした神経炎により神経に傷がつき、その神経の傷から痛みの信号が脳へ送られ続け痛みを感じます。そうなると非常に治りにくい痛みの病気となります(一生痛みが治らない場合もあります)。病名も発症後2~3か月を過ぎても痛みが持続する場合は帯状疱疹後神経痛と病名が変わります。一般に高齢者ほど、皮疹がひどいほど、患部の知覚低下があるほど帯状疱疹後神経痛になる確率は高くなります。
帯状疱疹痛治療の最大の目的はとにかく帯状疱疹後神経痛に移行するのを防ぐことです。それにはまず症状が出たら、①できるだけ早く(72時間以内が特に有効です)抗ウィルス薬(バルトレックス、ファムビル、ゾビラックス、アメナリーフ等)の内服、重症と考えられる場合には点滴を行うこと。②その痛みの神経に合ったブロック注射(一般的に頭、顔面などは星状神経節ブロック、首から下は硬膜外ブロックが最も多いです)を行い、痛みを遮断し、血流を改善して神経炎を早く抑える。③消炎鎮痛薬、アセトアミノフェンなどの内服の鎮痛薬を投与して痛みの軽減をはかる。です。特に②の神経ブロックは帯状疱疹後神経痛に移行するのを予防する重要な治療です。これらの適切な治療が行われれば、帯状疱疹痛は多くの患者さんでは1~2ケ月のうちに痛みが癒え治癒します。
しかしながら、それらの適切な治療を行っても、少数の患者さんでは前述した帯状疱疹後神経痛に移行することがあります。ただ、帯状疱疹後神経痛となってもほとんどの患者さんで硬膜外ブロックや星状神経節ブロックで、少しずつ痛みは改善して行きます。何も治療せずに痛みは一生続くものと諦めるのは早いです。
また、リリカ(プレガバリン)という神経障害性疼痛に効果を発揮する薬(トピックス又は痛みの相談と治療に詳述しています)が帯状疱疹後神経痛に効果があります。またリリカの効果が少ない場合、ノイロトロピン、トラムセット配合錠、トラマールOD錠、ワントラム、サインバルタ、トリプタノールなどの薬剤の効果が期待できます。これらをうまく併用すれば痛みは軽減することが可能です。]]>
http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=49
2020-07-23T00:00:00+09:00
腰椎椎間板ヘルニアの診断と治療について
腰椎や仙骨の椎骨と椎骨の間でクッションのような役割をするのが腰部椎間板です。その椎間板の膜に裂け目が入り、中の髄核が飛び出して脊髄神経や脊髄神経の枝で下肢へ通じる神経根を圧迫して、腰痛や坐骨神経痛、大腿神経痛(腰椎の2~4番目のヘルニアは大腿神経痛、4番目以下のヘルニアは座骨神経痛)を引き起こすのが腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎椎間板ヘルニアは水分が多く髄核内圧が高い若年から壮年に発症しやすく、高齢者では少なくなる傾向があります。痛みは多くはまず腰痛から起こり、次第に下肢の痛みやしびれが出てくることが多いです。X線ではヘルニアの確定診断はむづかしく、MRIでヘルニアが飛び出て神経を圧迫している像で判明します。また臨床症状や簡単な神経反射テストでもほぼ診断できます。
治療法ですが、以前は痛みが取れない場合は比較的早期に手術でヘルニアを摘出することが多かったのですが、手術しても再度椎間板ヘルニアが起こる場合が結構多いことや、近年MRIの進歩で、ヘルニアが段々小さくなることがわかってきて、近年は手術は相当少なくなっています。ただし多くの場合、発症後ある程度の期間、腰~下肢にかけて痛み(主に座骨神経痛)が続き、またそれは消炎鎮痛薬がほとんど効かない場合も多く、腰部牽引などのリハビリも効果がほとんどない場合が多いです。
そのような場合に、腰部硬膜外ブロックが痛みをとる有効な治療法となり得ます。ただその場合に重要なことは、同じ腰部硬膜外ブロックでも医療施設によりやり方が違い、効果も全く異なるということです。当院ではブロックに使用する局所麻酔薬を作用時間の長いアナペインという薬剤を使用しており、それまで使用していた一般的な薬剤より効果が強くなりました。ヘルニアに対するブロックの有効率は施設により異なりますが一般的には50~80%とされています。
また内服薬としては通常のロキソニン、ボルタレンなどは効果が少なく、神経痛に効果のあるリリカや弱オピオイド系のトラムセット配合錠やトラマドール錠の方が効果がある場合が多いです。特に硬膜外ブロックを定期的に行いながらこれらの内服を行うと効果が大きく、仕事をつづけながらの治療が以前に比べかなり容易になりました。
この腰部硬膜外ブロックと新しい鎮痛薬の併用治療で、大部分の椎間板ヘルニアの患者さんで仕事を続けながら治療が可能になったといえます。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=33
2020-06-22T00:00:00+09:00
急に激しい腰痛が起こった場合、ぎっくり腰と呼ばれます。原因として、腰椎の関節の捻挫が多く、さらに腰椎椎間板ヘルニアなども考えられます。ヘルニアの場合多くは腰痛とともに下肢の神経痛、つまり坐骨神経痛や大腿神経痛を訴えます。一方、腰椎の捻挫では下肢に痛みが生じることは通常ありません。ヘルニア以外の原因であれば、1~2週間じっと安静にしていれば痛みは大体とれます。しかし1~2週間も安静にしていることは実際困難なことが多く、できるだけ短期間で痛みをとり、早い仕事復帰を大部分の方が望みます。
急性の腰痛の治療法として、リハビリや消炎鎮痛薬(ロキソニン、ボルタレンなど)は軽症の場合は効果がありますが、激痛の場合はあまり効果がないことが多いようです。そのような場合、腰部硬膜外ブロックが最も効果のある治療法といえます。1回の腰部硬膜外ブロックでほとんどの方がすぐ仕事に復帰できるまで痛みは軽減します(当院では85~90%が1回で治癒します)。一方、急性の腰椎椎間板ヘルニアの場合は、坐骨神経痛が激しくなったりして治療にもう少し時間がかかることも多いです。
慢性腰痛の場合、痛みの原因は大きく別けて二つに分けられます(ただし原因がわからない腰痛が半分以上を占めることも知られています)。
ひとつは骨粗鬆症(痛みの相談に既述)や加齢による腰骨の変形(変形性腰椎症)、さらに比較的若い人に多い腰椎不安定症(痛みの相談に既述)などによって慢性的に腰骨、腰の関節、腰の周辺筋肉に炎症や不安定状態がおこり腰痛をおこす場合、また慢性的な腰椎椎間関節の炎症からきたものなどです(これらは腰の関節、骨が原因の腰痛です)。
もうひとつは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などの疾患により腰の神経が圧迫されて腰痛をおこす場合(神経性腰痛症すなわち腰の神経痛です)です。
慢性腰痛の治療は、どちらの原因でも(関節性腰痛症と神経性腰痛症)まず痛みの部位に腰部硬膜外ブロックを行うことですが、当院では近年2種類の慢性腰痛に使用するブロック注射の薬剤を関節性はネオビタカイン、神経性はアナペインと分けて使用しだしてから治療効果が明らかに強くなりました(原因は不明です。他のどの先生も分けて使うことなどしていないと思います)。
一方、お尻の上部から行う仙骨ブロックというものがあります(整形外科でよく行われます)。経験された方はおわかりだと思いますが、針が骨にあたるためかなりの痛みを伴うブロック注射で、お尻の部分より薬液を注入するため腰の痛みの部位まで、注入した薬液の一部しか届かない場合が多く、そのため腰痛治療効果は腰部硬膜外ブロックに比べて劣ります。
私は今まで約10万回の硬膜外ブロックをすべて安全に、かつブロックを行う時あまり患者さんを痛がらせずに行ってきました。
その経験から、腰痛を腰部硬膜外ブロックで治療する場合のポイントは、①痛みの原因とその部位を特定し、最も近い椎骨の間から硬膜外ブロックを行う。②いくつかある局麻剤から症状に最も効果のあるものを選んで使用する。③その薬剤の量と濃度を最適な量、濃度で使用し、薬剤注入後患者さんの体位で薬液は硬膜外腔を移動しますので、痛い方を下にしたり、座ってもらったりして薬剤を痛みの原因部位に集める。④ステロイド剤使用は必要最小限にとどめる。ことだと思います。
なお、硬膜外ブロックについてはサイト上に「硬膜外ブロックとは」という項目を設けて詳しく述べていますのでご覧ください。]]>
http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=50
2020-05-21T00:00:00+09:00
俗に言う五十肩(あるいは四十肩)は特に誘因もなく、40~50歳代を中心に、突然または徐々に肩関節の痛みと動きの制限(ひどくなると肩関節が拘縮して動かせなくなりそれを凍結肩と呼びます)を起こします。その病因は肩関節の周囲で年齢的な変化により、肩峰下滑液包の炎症、上腕二等筋の腱鞘炎、肩関節の炎症などが起こるためとされています。
症状は肩関節周辺の痛み(特に夜間痛めた肩を下にすると痛みで目が覚める。痛みのため肩から腕が挙げられない、背中側へ腕をまわせない)などの症状です。これらは時間がたてばたつほど肩関節を動かせなくなる、つまり凍結肩がひどくなることも多く、注意が必要です。
治療は整形外科の教科書を見ると、まず保存療法をおこなうことが記載されています。凍結肩になるのを防ぐために運動療法を行います。肩周囲の筋肉が拘縮して完全な凍結肩になると肩関節の動きを元にもどすことは難しいとされているからです。しかし、肩を動かすと痛いのに運動療法はつらいものだし、第一、痛くてできない場合がほとんどです。この保存療法の考えの根底にあるのが、五十肩は数か月で自然に治ることが多いとされているからです。しかし、もしそのとおりに自然に治らなかった場合は凍結肩となり、運が悪いと一生、脳梗塞後の患者さんによく見られるような肩関節が固まってしまうことも考えられます。
積極的な治療法としては、肩峰下滑液包へのヒアルロン酸の注射がよく効く場合が多いです。症状が出て早ければ早いほどヒアルロン酸注射の効果は大きいようです。
また併せて、ペインクリニックでは肩甲上神経ブロックを行ないます。肩甲上神経ブロックは肩の痛みをとり、ブロックが効いている間、肩の痛みが大幅に軽減しますのでその間の運動療法の補助(凍結肩防止)に役立ちますし、また何回か行うことによって肩の痛み自体も軽減する効果があります。また、痛みが頚椎症性神経根症による肩の痛み(神経痛)か肩関節自体の痛みかの鑑別にも役立ちます(頚椎症性神経根症では肩甲上神経ブロックを行っても痛みはまず軽くなりません)
あくまで私の考えですが、五十肩は症状が出たら、早急に上記した積極的治療を行うことが、肩の痛みをとり、肩関節の可動制限をふせぎ、早期の治癒しいては凍結肩を防止するベストな治療法と考えています。
同じような肩の痛みに、肩関節の腱板に石灰質が沈着して強い痛みと可動制限を起こす石灰沈着性腱板炎という疾患がありますが、これも重症だと石灰質の穿刺吸引が必要な場合がありますが、通常は局所麻酔薬とステロイドの肩関節注射で治ることも多いです。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=52
2018-12-17T00:00:00+09:00
当院はむち打ち症(医学的には外傷性頚部症候群または外傷性頸椎捻挫)のペインクリニック治療を行っています。
むち打ち症の最も多い原因は交通事故による追突ですが、スポーツなどでも起こり、症状により3つのタイプに分けられます。
①頚椎捻挫型。 頚椎の関節、靭帯などを傷めて、首、肩などの痛みを生じるタイプ、他の2タイプもこの症状はほとんどあります
②バレ・リュー型(頚部交感神経症候群型)。外傷による痛みや炎症から頚部の交感神経が刺激され、はきけ、めまい、頭痛、耳鳴り、眼の奥の痛みなどの多彩な症状を生じるタイプ
③神経根症型。頚椎から肩や腕に出てゆく神経が頚椎の出口で圧迫をうけて炎症を起こし、肩、肩甲骨部、腕の神経痛やしびれも生じるタイプ(頚椎椎間板ヘルニアの症状と同じです)。
通常は①が最も多く比較的治癒しやすいです。軽症型といえます②の症状は慢性化して治療にかなりの期間を要することが多いです。また、③はかなり重症の部類になります。
治療は、通常、整形外科や整骨院などで、リハビリやマッサージ、さらに消炎鎮痛薬、筋肉のこりを取る薬の内服などを行い、軽症の場合はこれで治ることも多いのですが、重症のむち打ち症ではこれらの治療では効果がない場合が多いです。効果がないと言ってもリハビリ治療直後は多少は楽になっていますが効果が長続きせず、すぐに元に戻ってしまいます。そのため、ずるずるとリハビリを続けてしまい、しかし根本的には治らない患者さんが決して少なくないのが問題となります。特に首のすらっとした首や肩の筋肉の少ない女性はわずかな衝撃でもむち打ち症になり、かつ治癒しにくいです。
その様な患者さんに神経ブロックを中心としたペインクリニックは有効な治療法です。具体的に行うブロック注射は症状に合わせて、トリガーポイント注射、星状神経節ブロック(特に②のバレ・リュー型には効果が大きいですが、何回か繰り返す必要がある場合が多いです)、頚椎椎間関節ブロック、頚部硬膜外ブロック、深頚神経叢ブロックなど多くありますが、睡眠障害を起こしたり、仕事、日常生活に支障をきたす激痛、特に神経根症型には頚部硬膜外ブロックが最も効果的だと考えられます。
私の経験ではむち打ち症はとにかくできるだけ短い期間で痛みをなくしてしまうのが最も重要なことだと思います。症状が長くなるほど治りにくいです。リハビリを2~3か月続けて症状が改善しないので、やっとペインクリニックに来院される患者さんがいますが、この方たちは、治療にかなり難渋することが少なくありません。
しかし、そもそもむち打ち症の頚椎捻挫は、医学的には本来そんなに時間がかからずに治ってしまうものと考えられています。ところが、現実には長期化する患者さんがかなり多いです。その理由として、まず患者さんの体質的な問題があります。前述した首のほっそりした女性は要注意で首のまわりの筋肉が少ないため、首の骨、靭帯、関節への衝撃が、同じ追突にあつても、男性に比べて大きくなり、この体型の女性が治療が長引くことが多いです。また加害者、保険会社の対応によって患者さんの被害者意識の増強。また医師、医療に対する不信感(効果がないのにいつまでも同じリハビリ、投薬を続けることが少なくありません)などが抑うつや不安神経症を生じさせ、それらが痛みを長期化、複雑化させている原因であると考えられています。
さらに最近、追突時の衝撃により、脳脊髄液が津波のように衝撃波となって尾側へ移動して硬膜という脊髄を覆っている膜にぶつかり、硬膜が裂け、そこから脳脊髄液が長期にわたりもれ続けることにより脳脊髄液が減少して、脳が刺激を受けて、それによって起立性頭痛、首の痛み、吐き気、腕のしびれ、不眠、抑うつなどの症状が持続して、いっこうに改善しない脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群、トピックス既述)というやっかいな疾患がかなり多いことがわかり、社会問題化しています。この治療は自分の血液を硬膜外から裂けた硬膜の部分に注入して血液を糊の代わりに使用して硬膜の裂け目を塞ぐブラッドパッチという方法がおこなわれます。
最後に、むち打ち症ははじめはそのうちに治るだろうと考える程度の症状の方が多いですが、完治しにくい場合が結構あることをよく知っておいていただきたいと思います。]]>
http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=34
2010-11-21T00:00:00+09:00
下肢(足)の神経痛はつらいものです。それは主に3つの神経痛、①坐骨神経痛(臀部、おしりから太もも,ひざの裏、ふくらはぎの外側、足先へかけての痛みやしびれ)、②大腿神経痛(太ももの前面の痛みやしびれ、患者さんは股関節が痛いと感じる場合があります)、③外側大腿皮神経痛(太ももの外側の痛み、大腿神経の枝で両方同時に痛むことが多い)が大部分で、同時に2つの神経痛を生じることもよくあります。
その原因はほとんどが腰椎疾患からです。まず高齢者では圧倒的に腰部脊柱管狭窄症が多いです。その症状の特徴はじっとしていると症状はないが、歩くと腰、足のしびれや痛みがひどくなりついには歩けなくなる(間欠性跛行と呼びます。歩ける距離が短いほど重症です)、前かがみの姿勢は楽だが後ろに反らすと痛い、朝より夕方の方が痛みとしびれが強い、これらの症状は腰部脊柱管狭窄症に特徴的なものです。また若年者から壮年者に多いのは腰椎椎間板ヘルニアです。また腰椎すべり症、腰椎不安定症などでもおこります。
これらの疾患により、下肢に通じる神経が腰椎から出る部分(神経根といいます)で圧迫を受けて痛みがでます。大腿神経痛、外側大腿皮神経痛は腰椎(腰骨は5個あります)の2、3、4番目から出る神経(腰神経叢といいます)、また坐骨神経痛は腰椎の4,5番目とその下部の仙骨から出る神経(仙骨神経叢といいます)が上記した様な疾患により圧迫を受けて生じます。下肢の神経痛としては、坐骨神経痛が有名ですが、大腿神経痛、外側大腿皮神経痛も多いです。診断はMRI検査でわかりますが、必ずしもMRIで神経の圧迫像がなくてもこれらの痛みが生じる場合も結構あります。おそらくMRIでは見つけにくいような小さな突起物が神経を圧迫しているものと考えられます。
当院のペインクリニック治療では、腰部硬膜外ブロックをまず行います(大腿神経痛、外側大腿皮神経痛の場合は腰椎2番、3番の間から、坐骨神経痛の場合は腰椎4番、5番の間、または5番と仙骨1番のあいだからアプローチします。)。硬膜外ブロックは漫然と行うのではなく、局麻薬など薬剤の種類(メピバカイン、ネオビタカイン、アナペイン等)を変えたり、投与濃度、投与量を変えたりして行います。また、神経根の炎症が強い場合はステロイドホルモンを必要最小限使用する場合もあります。腰部硬膜外ブロックを何回か繰り返すと痛みが、急速にあるいは徐々に軽減して行く場合が多いです。
また、硬膜外ブロックで効果が少ない場合は、神経根ブロックを行うと有効なことがあります。
さらに、リリカ(プレガバリン)という神経痛治療内服薬、トラムセット配合錠(トラマドールとアセトアミノフェンの混合錠)というこれも新しいオピオイド系鎮痛薬があります。ただしリリカは、ふらつき、めまい、眠気など、トラムセットは投与初期に吐き気、また慢性的には便秘がおこることがありますのでこれらの薬の作用に精通した医師に患者さん個々人に合った量を処方してもらうことが肝心だと思います。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=8
2010-08-15T00:00:00+09:00
頭痛には、脳内出血、くも膜下出血、脳腫瘍などの場合に生じる命にかかわる頭痛もありますが、それとは異なり命の危険は全くなく、頭痛の原因が脳の障害ではなく、頭がい骨を覆う筋肉(頭部筋群)とその中を走る神経において痛みが生じているものに分かれます。これを機能性頭痛と呼びます。機能性頭痛は慢性のものが多くその主なものに、緊張型頭痛と片頭痛(偏頭痛)、それに稀ですが群発頭痛があります。大部分の頭痛で苦しんでおられる方はこのいずれかに入ります。
① 緊張型頭痛(筋収縮性頭痛とも呼ばれます)は最も一般的にみられるもので、原因として、名前のとおり精神的、肉体的ストレス(疲れ、不安、不眠、抑うつ、過労、頚椎疾患特にストレートネックと呼ばれる頸椎の形をしている方などさまざまなことが原因となります)から起こり、頭蓋骨を覆う、特に首からつながる後頭部の筋肉(頭部筋群)が緊張して、筋肉の血流障害をおこし、それにより同所に痛みのもととなる物質が蓄積されて頭痛をおこします。その頭痛がさらにストレスを高めて、不安、抑うつ、神経症などを助長して痛みは複雑化し、こうした悪循環が慢性化しやすい原因となります。
緊張型頭痛は多くの場合、まず、肩の筋肉痛とこりから、首の痛みとこり、さらに頭痛へと肩から段々と頭部へ痛みがさかのぼってゆくパタ-ンが多いです。
症状は、痛みは、頭が締め付けるられるようなとか、頭に砂袋をのせたようなとか、頭に痛みのリングをかぶせたような頭痛と患者さんは表現します。痛みの部位は後頭部が多いですが、頭の片側や全周におよぶことも稀ではありません。また、眼の奥の痛みや疲れ眼も起きやすく、こめかみの痛みを感じることもあります。またしばしばはきけを訴えますが、片頭痛に比べて実際おう吐することは少ないのも特徴です。
治療は、患者さんはそれまで市販頭痛薬の安易な服用を長期にわたり続けている方(一種の鎮痛薬中毒です)が多く、これが治療を困難にします。第一の選択すべき治療法はトリガーポイント注射(トピックスで既述)を頚部、後頭部のなどのこりと痛みの部位(圧痛)に行います。トリガーポイント注射を繰り返し行うことで(1~2回でとれることも多いです)、大部分の患者さんにおいて、緊張型頭痛は比較的短期間で改善に向かうと思います。
トリガーポイント注射の効果についてはNHKの「ためしてガッテン」でも詳しくとりあげられました。これらの注射に使用する針は極く細く短く、注射する場所も頭蓋骨を取り巻く筋肉の表面を覆う筋膜下に行うので危険はありません。
また頭痛内服薬としてはよく使用するならばアセトアミノフェンをお勧めします。アセトアミノフェンは他の鎮痛薬と異なり胃を痛めたり便秘を起こしたりしない安全な鎮痛薬です。
内科、神経内科系の頭痛外来では、内服薬だけで緊張型頭痛を治療する場合が多いです。しかし、緊張型頭痛の場合、内服薬だけでは治療に長い期間が必要で、かつ効果も今述べてきたようなトリガーポイント注射を併用する治療に比べればはるかに弱いと思います。たとえれば、内服薬治療のみでは頭痛は雨から曇り空くらいにはなるが、青空にはならず真の痛みは取れないことが多いと思います。一方、内服薬治療とトリガーポイント注射の併用(トリガーポイント注射単独でも十分な場合が多いです)では頭の中は雨から青空になるようなすっきりした感じを受けるはずです。また内服薬の必要性はなくなる場合も多いです。
②もうひとつの慢性頭痛に片頭痛(偏頭痛)があります。片頭痛は、多くの場合、眼の奥、こめかみ、側頭部などの片側が痛みます。頭の周囲を取り巻く動脈(特に浅側頭動脈)が女性ホルモン(片頭痛は女性に多く、生理周期に影響されることが多い)、アルコール、ポリフェノール(赤ワイン、チョコレート等に多く含まれる)などの頭の血管を拡張させる物質により動脈が拡張し、動脈拍動が周囲の組織、神経(特に三叉神経)を刺激して頭痛を起こします。この頭痛には多くは前兆があり、光、音、においに敏感になり、それらが頭痛を増強させます。また緊張型頭痛と異なり、80%がはきけだけでなく実際おう吐します。また閃輝暗点という視界周囲に黒いギザギザが見え、中心部がまぶしい独特のものの見え方をおこすことがあります。
痛みは動脈の圧迫によるものなので、ズキンズキンとくる拍動性の頭痛で、緊張型頭痛より激しい耐えがたい激痛です。部位としてはこめかみ、眼の奥、側頭部が多く、そこを針で突き刺されるような脈拍に一致した激しい頭痛です。治療は軽症の場合はともかく、ある程度以上の強い片頭痛には通常の頭痛薬はまず効きません。特効薬といっていいのがトリプタン製剤の内服(イミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージ等)です。
トリプタン製剤は片頭痛にしか効かず、これが片頭痛診断の決め手ともなります。また眼の奥の激痛がよくおこりますが、これにはまゆ毛の部分に簡単なブロック注射を行うと痛みはすぐに消失します。
また、片頭痛の患者さんは片頭痛発作の時、首や頭の筋肉に過剰な緊張を生じますので、前述した緊張型頭痛を併せ持っている方が非常に多いです(混合型頭痛と呼びます)。
片頭痛予防薬としてはデパケン(バルプロ酸ナトリウム、てんかんの薬です)やインデラール(ベータブロッカー)が有効な場合があります。
③それ以外に男性に多くみられるのが群発頭痛です。痛み方は片頭痛とほぼ同じ、眼の奥、こめかみ、側頭部、耳介部などに拍動性の激痛がでます。数ヶ月から2年に一度くらい発作がおこり1~2ヶ月続きます。アルコールを飲むと痛みが誘発され、夜間に特に激しく痛み、がまんできない激痛です。診断は100%の酸素を吸入させると、頭骸骨周囲の動脈が収縮して痛みが軽減することでわかります。治療は片頭痛と同じくトリプタン製剤が効きます。
いずれにしろ慢性頭痛治療の要は、まず何の頭痛か鑑別すること、そして内服薬のみでなくトリガーポイント注射を併用すること。それで一部の重症者を除けば比較的簡単に治療できるはずです。
④後頭神経痛。第3頚神経が刺激を受け、第3頚神経の分布する左右どちらかの後頭部筋肉内の神経痛でズキンズキンと激しく痛みます(つまり頭痛ではなく頚椎症の痛みです)。第3頚神経は耳介の後ろ乳様突起の真下からでますので、そこを押さえると痛みが増加します。治療は後頭神経ブロック、それが効果が少ないなら頚部硬膜外ブロック。薬剤は神経痛治療薬リリカが効きます。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=22
2010-07-07T00:00:00+09:00
首、肩のこりと痛み、それに伴う締め付けられるような頭痛(これらは緊張型、あるいは筋収縮性頭痛と呼ばれます)で苦しんでおられる方は非常に多く、それは筋・筋膜性疼痛症候群と呼ばれる体中あちこちの筋肉の異常なこりから生じる筋肉痛の症状で、その一番多く生じる部位、すなわち首、肩に生じた症状といえます。
筋・筋膜性疼痛症候群(Myofascial pain syndrome,MPS)とは、頭、首、肩などの筋肉に緊張が生じて、それにより痛みとコリを生じる疾患です。MPSは一般にはあまり知られていない病名ですが、首、肩のこりと痛み(カルテ病名では頚肩腕症候群、肩甲肋骨症候群などと呼ばれています)とそれに伴う緊張型(筋収縮性)頭痛のことです。
MPSは、何らかの原因により(過去にむち打ち症など首のけがを経験した人。また筋、筋膜への過度の負荷がかかる場合、たとえば肩、首の筋肉の少ないなで肩の首のスマートな女性や後述するストレートネックの人)筋肉に過度の緊張が生じて、筋肉内の血流低下を起こし、そこに痛みの物質(ブラディキニン等)が蓄積して痛みとコリを生じます。特にストレートネックはレントゲン側面像でみると正常は頚椎は前方に30度くらいに湾曲して頭の重みを真下から支えているのですが、それが頚椎が竹のようにまっすぐな形状をして、頭の重みを斜め後ろから支えそれにより肩や首の筋肉に過剰な負担がかかっている状態で、MPSの原因として非常に多いです。
MPSの多くは肩や首を触っただけで筋肉の硬さを感じ、また索状硬結とよばれる筋肉の塊(しこり)を触れます。さらに硬い筋肉の部分に圧痛点が存在し、ここをトリガーポイント(引き金の意味です)と呼び、痛みの中心点です。索状硬結部のトリガーポイントを圧迫して強い痛みを感じればMPSと考えて間違いないでしょう。
緊張型(筋収縮性)頭痛は頭全体が締め付けられるような痛みで、ひどくなると、眼の奥の痛みや疲れ、こめかみの痛みを生じることも多いです。また痛みだけでなく、睡眠障害、抑うつ症状、耳鳴り、吐き気などを引き起こすことも稀ではありません。
MPSの治療は局所麻酔薬やネオビタカインを使用したトリガーポイント注射(痛点ブロックとも言い、圧痛点の筋膜上に薬液を注入します。トピックスに詳しく既述)が第一に選択する非常に有効な治療法です。トリガーポイント注射の効果があまりない場合も稀にみられますが、そのような場合には筋肉のこりを取る効果の強い肩甲背神経ブロック、また星状神経節ブロックは局所筋肉の血流が増加して、強い効果が得られる場合がよくあります。また頭痛や首の痛みが強い場合の内服薬としては胃、腎臓などの臓器を障害しないアセトアミノフェン(小児の解熱薬ですが、それより多めに服用します)がよいと思います(アメリカでは鎮痛薬の85%はアセトアミノフェンです)。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=5
2010-07-01T00:00:00+09:00
顎、肩、首、背中、腰、足、さらに全身の関節があちこち痛む方はいらっしゃませんか?線維筋痛症という痛みの病気かもしれません。線維筋痛症は、はじめは体の一部から段々痛みが全身におよび、少なくとも全身の数か所に強い痛みを感じ、重症になると痛みのため寝たきり状態で社会生活を送ることができなくなることも稀でない痛みの病気です。「死ぬほど痛いが、死ぬ病気ではない」とも言われています。当院は線維筋痛症学会認定診療ネットワーク医療機関です。
具体的な症状として、顎、頚部、肩、腕、背部の痛みやしびれ、腰痛や腰のだるさ、臀部の痛み、ふとももから足への痛みやしびれ、さらに、頚椎、手首、肘、肩、膝、足首などの関節痛が生じることも多いです。これらのうちの数か所が3か月以上痛む場合は線維筋痛症をまず疑ってみるべきです。
また、痛み以外にもほとんどの患者さんが疲労感、睡眠障害、抑うつ状態(ふさぎ込み)を訴えます。さらに特徴的なのは粘膜病変で、約半数の患者さんが口や眼の乾燥や口内炎、消化器の粘膜病変のため、下痢、便秘、腹痛、胃液が上がってくるなどの症状や、膀胱の症状、月経異常などを訴えます。これらの痛みや諸症状のため生活が障害され、患者さんの34%は休学、休職を余儀なくされ、経済的にも深刻な問題を抱えている患者さんは数十万人にのぼるとされています。
欧米ではかなり以前から知られていたこの病気も、日本で知られだしたのはわりと最近です。驚くことに日本人でこの病気の患者は人口の1.7%にものぼり、200万人以上の患者さんが日本にいると言われています(慢性関節リウマチの患者さんの約3倍です)。また線維筋痛症は、女性が男性より6~8倍も多く、すなわち日本女性の30~35人にひとりは線維筋痛症患者ということになります。あなたの周囲にも必ず線維筋通症の患者さんはいるはずで、統計上は私の住んでいる大分市にも約8000~9000人の患者さんがいることになります。肩、腰、肘 足など体のあちこちが以前から痛いが、複数の病院を受診しても原因がはっきりせず治療効果がない方が実は線維筋痛症である可能性はかなり高いと思われます。また精神科などでうつ病と診断された患者さんのなかに線維筋痛症が原因でうつの状態になっている方がおられることがあります。
そんな深刻な病気にもかかわらず、線維筋痛症という病名を全く知らない医師は30%(以前は70%と言われていました。医師の認識も少しずつ進みつつあります。)もいて、また9割以上の患者さんが正しい病名をつけられていないのです。線維筋痛症という正しい病名が判明するのに平均4.3年かかると言われています。
実は大部分の医師はすでに複数の線維筋痛症患者さんを外来で診察しているはずなのです。ところが考古学者が石ころのなかから旧石器を見つけるのは容易ですが、旧石器に興味のない人は旧石器の石斧をただの石ころとしか認識できません。つまり医師に線維筋痛症に対する確かな知識と常に線維筋痛症のことが頭になければ見落としてしまいます。逆にあれば診断は容易なのです。
この結果、現在の日本の医療現場では、膨大な数の線維筋痛症患者さんが、間違った病名で間違った治療を受けているか、放置されているかが現状なのです。患者さんからよく聞くのは周囲の人や医師から気にしすぎだとか、放っておけばそのうち治るよなどの無責任な言葉です。実際は放っておいても治癒する確率は低いのです(年間治癒率1.5%、 つまり100人のうち1.5人が治癒)。また、診断がはっきりしないため、精神的な要因であろうとのことから、抗うつ薬や精神安定剤などを処方される場合がかなり多く、ますます病状を複雑にします。
しかし線維筋痛症学会も発足し患者さんにも医師にも社会にも、この病気への認識と理解が最近は少しずつ進んできています。保険診療で線維筋痛症の病名が認可されたのは2010年からです。
線維筋痛症は、血液検査、CT、MRIなどは異常はありません。原因は今のところ不明ですが、リウマチの近縁疾患と考えられています。しかしリウマチや膠原病と異なるのは炎症反応(血液のCRP検査でわかります)がないことです。関節の炎症を起こして関節が腫れたり熱をもつことは線維筋痛症では通常ありません。炎症がないということは痛みに対して通常まず使用されるロキソニンやボルタレンといった消炎鎮痛薬はほとんど効果がないということです。
膠原病、リウマチ、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)の患者さんが線維筋痛症にかかる率は一般より高く、またけが、手術、感染症等の何かの外的要因や肉親の死、、離婚、失職などの精神的ストレスが原因となって線維筋痛症を発症することも多いです。しかし原因不明で発症する方もまた多いのです。
診断は、アメリカリウマチ学会(ACR)が1990年に決めた、①他の痛みの病気ではない。②3か月以上体の広範囲に痛みを感じる。③首、背中、腰、下肢などあらかじめ決められた全身18ヵ所の圧痛点を4kgの力(爪が白くなるほど指で押します)で押して、痛みを感じる点が11ヵ所以上あれば、線維筋痛症と診断されます。また、圧痛点を使用しないACR2010年の診断基準(痛みの全身への広がりと多彩な随伴症状を点数化して13点以上が線維筋痛症と判断)もありますが、線維筋痛症患者さんはほとんどの場合どちらとも陽性になります。
治療法は線維筋痛症に効果のある内服薬の服用が主となりますが、線維筋痛症で特徴的なことは通常よく使われる、ロキソニン、ボルタレンなどの消炎鎮痛薬(NSAIDsといいます)は無効であるということです(なぜならこれらの薬剤は炎症性の痛みに効果がありますが、線維筋痛症は炎症性の痛みではないからです。逆にNSAIDsが効果があれば線維筋痛症ではない可能性が大きいです)。ただし頭痛な線維筋痛症の痛みではなく随伴症状なので頭痛だけにはこれらのNSAIDsは効果があります。
線維筋痛症に効果のある薬剤は、①プレガバリン(リリカ、唯一の線維筋痛症保険適応治療薬)、②ミルナシプラン(トレドミン、SNRIという鎮痛作用を持った抗うつ薬で患者さんがうつ病もしくはうつ状態であり、その診断名が必要)、③デュロキセチン(サインバルタ、同じくSNRIという鎮痛作用を持つうつ病の薬でしたが、2015年6月より線維筋痛症にも保険適応拡大されました。)、④トラムセット配合錠またはトラマール(同じトラマドールという弱オピオイド製剤、非がん性慢性疼痛症の診断名が必要)、⑤ノイロトロピン(これは特別な診断名は不用)⑥ミルタザピン(リフレックス、レメロン、 NaSSAという抗うつ薬でこれもうつ病の合併があれば投与可能)などです。さらに抑うつのある患者さんには精神安定剤や抗うつ薬、不眠の患者さんには睡眠薬などが使用されます。私の印象では痛みが重症の患者さんにはデュロキセチンが最も効果が大きいという印象があります。痛みが中等度~比較的軽度の患者さんにはリリカ、トラムセット配合錠またはトラマール、ノイロトロピンなどが効く場合が多いです。これらの薬剤で強烈な痛みのため自殺念慮の状態まで行った患者さんが救われたことも何度かあります。
藤垣クリニックでは現在日本線維筋痛症学会診療ネットワーク医療機関として約80人の線維筋痛症患者さんの保険診療を行っています。当院での治療で、大部分の患者さんの痛みの軽減、気持ちの安定化、不眠の解消、日常生活の活動度の改善など効果がでていると感じています。
#当院は日本線維筋痛症学会のネットワーク医療機関となっています。学会のウエブサイトには当サイトよりリンクしています。
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2010-05-10T00:00:00+09:00
当クリニックでは頸、頭、肩、腕などの胸から上部のさまざまな痛みに対して、患者さまが希望すれば星状神経節ブロック治療を行っています。ペインクリニックの外来診療で、星状神経節ブロックは硬膜外ブロック、トリガーポイント注射等とならんで最も多く行われる手技です(当院においては、頚椎症の患者さんが多く、頚部硬膜外ブロックの効果が他のブロックより有効なため、星状神経節ブロックは最近は少なくなりつつあります)。従ってペインクリニック医は特に星状神経節ブロックと硬膜外ブロックに関しては、確実に、安全に、患者さんに不快な思いをできるだけさせずに行える技術を習得していなければなりません。
星状神経節ブロックとは、頚部の交感神経節に局所麻酔薬を注入することにより、交感神経の活動を一時的に遮断して、その結果として頭部、頚部、顔面、上肢の血流を増加させ、また痛みを緩和させるものです。ブロックが確実に行われたならば、ホルネル徴候といって、ブロックを行った側のまぶたが垂れ、瞳孔が収縮します。ホルネル徴候は星状神経節ブロックにより頚部交感神経が遮断された証明となります。さらに目の充血、顔のほてり感、肩甲部や腕のぬくもり感がでます。
手技は左右どちらかの目的とする側の第6頚椎(第7頚椎の方が特に上肢や肩甲部への効果は強くでますが、椎骨動脈に当たる可能性が増すので第6頚椎で行うことが多いです)の横突起(第6頚椎横突起が最も皮膚から触れやすく、気管の横にあります)を指でかき分けて見つけ、皮膚より注射針を刺入してやや内側を向けて進め、ゆっくりと横突起の付け根にあててそのまま局所麻酔薬(通常1%メピバカイン5ml)を注入します。星状神経節ブロックの手技の難しさですが、首の細い方は第6頚椎横突起はすぐに指で触れますが、猪首の方のような首が短くて太い方は第6頚椎横突起が深い場所にあり、見つけるのが困難な場合もあり、このような方はブロックの手技が難しくなります。
注入後は5分間の針刺入部の圧迫を行います。正しく行われれば数分もすると段々と先に述べたホルネル徴候が現れてきます。さらにブロック後30分間の安静と観察が行われ、特に異常がなければ帰宅して大丈夫です。ただし、左右同時に星状神経節ブロックは行えず、必ずどちらか一方です。
適応疾患としては、緊張型頭痛、非定型顔面痛、頚椎疾患による痛み、バレ・リュー症候群(頸椎からの痛みのため頚部の交感神経が刺激を受け、はきけ、めまい、冷感、耳鳴り、頭痛などの多彩な症状がでます。星状神経節ブロックが著効します)頚肩腕症候群、筋・筋膜性疼痛症候群(トリガーポイント注射と併用すると効果が増強します)、複合性局所疼痛症候群(神経の傷によって痛みがでる難治の疾患で、それが頭部、頚部、上肢におこった場合、特に肘部での採血で誤って正中神経を損傷した場合はできるだけ早期の星状神経節ブロックが複合性局所疼痛症候群に進行するのを防ぎます)、胸郭出口症候群、肩関節周囲炎(五十肩)、頭部、顔面、頚部、上肢にできた帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、顔面神経麻痺、突発性難聴、めまい症、更年期障害などです。
すなわち、頭、顔面、頚部、上肢の末梢循環障害や交感神経の興奮性が高まっている状態(交感神経が痛みの神経を裏で操っているとも言えます)の痛みの疾患に、星状神経節ブロックの交感神経を遮断して血流を増加させる効果が有効に発揮されます。
星状神経節ブロックの起こりうる副作用として、反回神経マヒが最も多く、特に、女性の首の筋肉が少なくほっそりした人に起きやすく、また頚椎横突起に針先を当てずに浅い位置や気管に近い内側で局所麻酔薬を注入すると起こりやすくなります。反回神経は声帯を動かす神経で星状神経節のすぐ近くを通ります。局所麻酔薬が反回神経までしみ込むと声がかれたりのどに違和感を感じたりします。その状態で唾液を呑み込むと気管に入りむせますので唾液は口から出します。また反回神経マヒは長くても60分程でとれます。反回神経麻痺が同時に両側で起こると声帯が狭まり呼吸がしにくくなるので、前述したごとく星状神経節ブロックはいっぺんに両側はできないのです。
その他、抗凝固薬や血小板凝集阻害薬(いわゆる血液がサラサラになるという薬です)を内服している方において、頸動脈や頚椎横突起の後ろを走る椎骨動脈をあやまって穿刺すると出血が止まりにくくごく稀に頚部や縦隔に血腫をつくる可能性が報告されていますので要注意です(これらの薬剤を休薬して行うことが必要です)。また、免疫力のおちる糖尿病やリウマチなどで免疫抑制剤を服用している患者さんは感染に弱く、不潔操作による星状神経節ブロックで頚椎の骨髄炎の報告もあります。また、椎骨動脈に局所麻酔薬を誤って1mlでも注入すると、一時的な痙攣や意識消失を起こします。
このように書くと星状神経節ブロックがとても危険なブロックのように思えるかもしれませんが、星状神経節ブロックは、このブロックに十二分に精通した医師がやること。さらに万が一の場合にそなえて完璧な蘇生技術を持った医師すなわち麻酔科を経験した医師が行えば極く安全なブロックです。
星状神経節ブロックは不思議な注射です。単に組織の血流増加作用だけでは説明できないようなさまざまな効果がでる場合が往々にしてあることはペインクリニック医ならほとんどの人が経験しているはずです。たとえば、たまたま痛みの治療のため春先に星状神経節ブロックをしていたら、その年の花粉症の症状がずっと軽くすんだとか(よく花粉症の患者さんがその目的で来院されることがありますが、保険診療では花粉症は適応外です)、不眠症が治ったとか、体の上肢より上の部分にしか作用しないはずなのに足底のカサカサ皮膚がツルツルになったなどのことはよくある例です。そのため自律神経、内分泌、免疫などに働いているとする説がさかんに言われていますが、厳密に医学的に実証されたわけではありません。それらがはっきりと証明されれば、星状神経節ブロックの適応疾患がもっと増えていくのかもしれません。
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2010-05-07T00:00:00+09:00
当院ではトリガーポイント注射で、肩、頚部、肩甲部の痛みとこり、さらにそれらがひどくなると起こる筋収縮性頭痛を取る治療をしています。トリガーポイント注射(トリガーポイントブロックあるいは痛点ブロックとも言います)はペインクリニックの外来診療で行われる一見簡単に見える(完璧に行うのは簡単ではありません)手技ですが、その効果は時として非常に有効なことがあります。主に筋・筋膜性の痛みに効果を発揮します。すなわちひどい肩や首のこりと痛み、それに伴う頭痛(筋収縮性頭痛)さらに筋・筋膜性の腰痛などに対してです。
過去NHKの「ためしてガッテン」をはじめテレビ番組でトリガーポイント注射の効果が詳しくとりあげられました。
筋・筋膜性の痛みの中心をトリガーポイント(トリガーとは引きがねの意味)と言います。その部位には筋肉のしこり(索状硬結といいます)があり、圧迫や針の刺入でその部位の痛みを強く感じます。
こりと痛みに悩んでいる方は大変多く、現代人の肉体的、精神的なストレスから来る痛みとも言えます。
これらのの諸症状、すなわち肩、肩甲骨部、首のこりと痛み、頭痛、眼の奥の痛みなどの一連の痛みに対して、トリガーポイント注射は第一選択の治療法と言えます。その他の部位でも、筋膜性背部痛、筋膜性腰痛、などの症状もよく見られますが、それらにもトリガーポイント注射が効きます。
また、顎関節症(トピックス既述)、さらに頚椎、腰椎椎間板ヘルニア(痛みの相談で既述)や腰部脊柱管狭窄症(痛みの相談で既述)、むち打ち症(痛みの相談で既述)、寝違え(痛みの相談で既述)、複合性局所疼痛症候群(トピックスで既述)などで筋肉、筋膜からの痛みが生じている場合も効果が期待できます。
トリガーポイント注射の効果は,①注射した局所麻酔薬により痛みを感じなくして脳への痛みの信号を遮断する ②痛みによっておこる局所の交感神経の興奮を抑えて、局所血流増加作用をもたらす ③局所にたまる痛みを増強する物質(ブラディキニンなど)を改善された血流で洗い流して痛みをとることといわれています。つまり痛みが原因で痛みを増強している状態を断ち切るのです。
実際のやり方は、私は27ゲージの非常に細い注射針(断面積は採血針の1/4です)を用い(27ゲージですと針を刺した痛さはほとんど感じません)、 トリガーポイントに刺入し、局所麻酔薬を注入します。局所麻酔薬は1%カルボカインよりもネオビタカインの方が鎮痛効果が強くかつ長いとの報告が多いようです。また、ノイロトロピンをこれらの薬剤に混ぜると効果があがるとの報告もあります。
注射手技ですが、まず、指で皮膚を圧迫してトリガーポイントを見つけます。注射針を刺す際は、消毒の後、比較的速やかに針を進め、筋膜にあたった感触があった深さ(筋膜直下)で針を止めて(私の感覚でたとえれば、ちょうど海釣りをするときにおもりが海底に沈んで行き着底したときに手先の感覚が微妙に変化した時の感じに似ています。)、薬液の注入を行います。筋膜直下で注入すると筋膜下に沿って薬液は広がってゆきます。トリガーポイントに正確に針先があたれば筋膜にあたった時点でズーンとした痛みを患者さんは感じたり、そこの筋肉がピクッと痙攣したりします。抜針するときはゆっくり行うことが重要とされています。これを速刺緩抜と呼び、いみじくも東洋医学の針治療の方法と同じで、トリガーポイントに注射針を刺入するだけで、一種の針治療効果(経穴効果)も得られるとする説があります。さらにそれに加えて注入した薬液が筋膜から緊張した筋肉にしみ込んで、前記したような効果により筋肉の緊張と痛みをとると考えられています。
以上のことをふまえた上で、経験をつめば、見た目にはただの筋肉注射にしか見えないトリガーポイント注射がじつは別物であり、筋肉注射とは効果にも格段の差があることが患者さんにもすぐにわかると思います。この注射を行う医師のもつ技術と経験の差が治療効果に大きな差を生じる手技といえます。
医療費については、トリガーポイント注射は健康保険3割負担の方で自己の支払いは、初診で1080円、再診から470円程度となります。注射を何回か繰り返すうちに段々痛みとこりが軽くなってゆきます。特に頭痛は早期にとれることが多いです。]]>
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2010-04-07T00:00:00+09:00
メコバラミン(メチコバール)は末梢神経のしびれ、痛み、麻痺などに使用される薬剤で、たとえば、顔面神経麻痺、坐骨神経痛、大腿神経痛、上肢、下肢のしびれ痛み、帯状疱疹痛 帯状疱疹後神経痛、複合性局所疼痛症候群(これらはいずれも痛みの相談と治療かトピックスで解説しています)などに処方されます。
メコバラミンは活性型ビタミンB12のことで、末梢神経は核酸やリン脂質で形成されており、その核酸やリン脂質を増加させて神経を修復する作用があります。
特に傷ついた神経細胞の軸索という神経の信号が伝わる部分の修復を促進する作用により、末梢神経の痛みやしびれや麻痺を改善する効果があります。
ただし、手足のしびれや麻痺を改善するにしても、その原因や神経の傷の程度に効果は影響され、なんでもしびれや麻痺が回復するというものでもありません。手足のしびれや麻痺、顔面神経麻痺、帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、複合性局所疼痛症候群などにはむしろ効いたという感じがあまりしない場合の方が多いと思います。医師によってはメコバラミンはあまり効果がないと考えて、末梢神経の痛みやしびれ、麻痺などにも処方しない方もおられるようです。
ただし、これは私の今までの経験からのことですが、メコバラミンが明らかに効く場合があります(もちろんすべての方ではありませんが)。それは、腰椎椎間板ヘルニアなどによる坐骨神経痛に対して、硬膜外ブロックなどを行って、坐骨神経痛がある程度軽くなった時点でメコバラミンの内服を処方すると、かなりの患者さんがその効果を実感され、もう硬膜外ブロックを行わなくとも坐骨神経痛が軽くなったと感じることが多いです。その後メコバラミンのみ処方して、一時激痛であった坐骨神経痛をほとんど感じなくなって、毎日元気で過ごしておらえれる患者さんが相当数いらっしゃいます。また、頚椎椎間板ヘルニア(痛みの相談と治療既述)等で生じる頚椎症性神経根症(痛みの相談と治療既述)も症状が軽い場合はメコバラミンの効果がはっきりわかることが結構あります。その患者さんたちもメコバラミンを中止したらまた坐骨神経痛や頚椎症性神経根症が悪化したと、再度処方を希望される方が多いことからも、メコバラミンが効いていることは明らかです。ただし、これはブロック注射等で神経の痛みと炎症が相当改善した場合にメコバラミンを内服投与して有効なのであって、いきなり強い神経痛に対してメコバラミンを内服させても効果はまずありません。
メコバラミンはビタミンB群なのでビタミンB群は水溶性で、たとえ大量投与しても尿から排出され体内に蓄積はしません。ただし服用量が多いと心拍数が多くなる方や血圧が高くなる方が稀にいらっしゃいますので、内服用量の一日1.5mg(0.5mg錠(500μg錠)を3回)を守ることは大切です。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=45
2010-04-06T00:00:00+09:00
ロキソニンやボルタレン、あるいはイブ、ナロンエースなど通常の鎮痛薬(消炎鎮痛薬)とは作用が全く異なる神経痛専用治療薬でリリカ(プレガバリン)といいます。中枢性および末梢性神経障害により生じた神経痛の治療に効果を発揮します。具体的には帯状疱疹後神経痛(トピックス記述)。糖尿病による末梢神経障害性神経痛。三叉神経痛(トピックス記述)。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症(トピックス記述)からくる坐骨神経痛、太腿神経痛。変形性頸椎症、頸椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群などからくる頸椎症性神経根症(頚、肩、肩甲部、腕の激痛、トピックス記述)。重症の肋間神経痛。複合性局所疼痛症候群(CRPS、トピックスに記述)などの痛みです。
いままでこれらの神経痛には一般的には通常の消炎鎮痛薬(ボルタレン、ロキソニン等々)が投与されていましたが、弱い痛みならいざしらず、強い痛みにはほとんど無効でした。
これらの痛みは激烈な場合も多く、夜も寝られないほど痛みに苦しんでおられる患者さんは相当いらっしゃいます。それらの患者さんにとっては何よりの朗報です。ただし有効率はほぼ60~70%ですべての神経痛に効くわけではありませんが、いままで、神経ブロック以外有効な治療薬もなかった神経痛に画期的な内服の鎮痛薬がでたことは間違いありません。
神経痛は神経細胞にカルシウムイオンが作用して痛みの伝達物質が過剰に放出されることにより起こります。リリカの作用機序は神経細胞のカルシウムイオン結合部位のα2δ(デルタと読みます)サブユニットという部位に結合して、カルシウムイオンの結合を抑制して、痛みの伝達物質の放出を低下させ鎮痛効果を発揮します。
すでに世界中で神経痛の第一に選択する鎮痛薬として使用されています。ただし、副作用として、眠気、めまい、ふらつき、浮腫などが10~20%の確率で出現します。特に高齢の女性に時折つよいふらつき感が1~2日も持続することがあるので注意が必要ですが、この薬の作用に精通した医師は患者さん個々人により初期投与量を調節しますので、それらの医師に処方してもらう方が安全です(リリカは腎臓排泄性なので腎機能低下者には作用が強くでます)。しかしそれらの副作用は服用していくうちに段々と弱くなっていくことが多いです。
我々、ペインクリニック医にとっても、神経ブロックが効かない、あるいは神経ブロックを患者さんが希望しない、血液が止まりにくい薬を内服していて神経ブロックができない、あるいは神経ブロックを行いながら併用することで効果が倍増する、などの場合に使用して治療効果を上げています。
ただし、私の印象ですが、リリカはいきなり使用するよりも、神経ブロックなどでまず神経の炎症(侵害性疼痛)を除いてから使用するほうが効果が明らかに強い印象を受けます。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=14
2010-04-05T00:00:00+09:00
通常の消炎鎮痛薬(バファリン、ロキソニン、ボルタレンなど、NSAIDsと言います)とは全く異なる作用機序の鎮痛薬ノイロトロピンという薬があります。ウサギの皮膚にワクシニアウイルスを注射して、そこの炎症を起こした部位より摂取した物質を抽出精製したもので、日本で開発されました。消炎鎮痛薬のように胃腸障害や臓器障害を起こすことはまずなく、安心して長期でも使用できる薬です。
ノイロトロピンは急性の痛みには効かず、たとえばぎっくり腰などに使用しても効果はありません。ノイロトロピンは慢性の神経痛など,痛みを伝える神経の感受性が増して痛みをより強く感じやすくなった状態の痛みにその感受性を低下させて効果を発揮します。慢性の神経痛に使用すると、はじめは効いているかどうかわからないが、少しずつ痛みが軽くなってゆく作用があります。患者さんもノイロトロピンを中止したら痛みが強くなり、はじめて効果があったんだと気がつく場合も多いです。
ノイロトロピンの作用機序はまだ完全にわかっておらず、下降性疼痛抑制系とよばれる脊髄レベルで脳の痛みを感じにくくする作用が関係しているのではないかと言われています。また、慢性痛、特に神経の傷が原因の痛みでは脳の視床という場所の血流が低下し、それが痛みを強く感じさせるとされています。ノイロトロピンはその視床の血流を増加させる作用があり、それがノイロトロピンの慢性痛への効果に関与しているという説もあります。
適応疾患には帯状疱疹後神経痛(トピックスに記載しています)、ちなみにアメリカのFDA(食品医薬品局)というアメリカで使用される薬剤の認可を決定する機関が認めた帯状疱疹後神経痛に効く薬のひとつがノイロトロピンです。神経損傷による神経痛(CRPS、複合性局所疼痛症候群といいます。トピックスに記載しています)、線維筋痛症(トピックスに記載しています。リリカとの併用で特に効果を発揮するようです)など、主に難治性の神経痛や原因のわかっていない線維筋痛症のような全身の痛みに用います。ただ、FDAでは1日8錠で効果を認めましたが、日本では保険上通常は1日4錠までしか使用できません(それなりの理由が認められれば6錠まで内服可能なこともあります)。副作用のほぼない薬ですので、頑固な神経痛に悩んでいる方にはもう少し多く投与できればよいのですが。それを補う意味でどうしても多めの使用が必要な痛みの強い患者さんには、内服に加えて、時折ノイロトロピンの注射薬を併せて使用することもあります。私の経験ですがこれは効果があります。もし1日8錠の服用が保険で可能になれば神経障害性疼痛を中心に副作用がほとんどなく効果も強い、リリカを脅かす理想的な鎮痛薬となる可能性がおおいにあります。近年中にそうなる可能性は実はあります。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=15
2010-04-04T00:00:00+09:00
藤垣クリニックは大分市でペインクリニック(痛みの治療)を行っています。
顔面の知覚、痛みを感じるのは、脳からでている神経のひとつである三叉神経です。よく顔面神経痛ということばを聞くことがありますが、顔面神経は同じ脳からでている神経ですが、知覚、痛みには関係しておらず、顔面の筋肉を動かす運動神経なので、顔面神経が痛むことはありません。三叉神経は、脳から下方に出て卵円孔という穴をぬけると、三つに分かれる神経で上からⅠ枝(眼じりより上)、Ⅱ枝(眼じりから口角まで、上顎)、Ⅲ枝(口角から下顎まで)に分かれ、それぞれの部位の痛覚、知覚を感じます。歯痛も、上顎の歯痛はⅡ枝、下顎の歯痛はⅢ枝の三叉神経を介した痛みです。
さて、三叉神経痛(正式には特発性三叉神経痛と言います)の痛みは激烈で発作的に短い痛み(電撃痛)が特徴です。原因は頭蓋内の三叉神経が卵円孔を通る時に血管に圧迫されて痛みが生じます。三叉神経痛の痛みのきっかけとして、その部分をさわる、歯磨き、髭剃り、物をかむ、話すなどが引き金となります。また痛みがしばしば歯肉に生じるため、虫歯と間違えられて抜歯する場合も多いです。
治療は薬物療法としてはテグレトールというてんかんの薬が効果があります。しかし強い三叉神経痛の場合これが無効な場合も多く、さらにテグレトールはふらつきの副作用が強く使用できない患者さんもいます。また2010年よりリリカ(プレガバリン)という神経痛治療薬も使用できるようになりました。テグレトールの方が効果は強いですが、テグレトールは薬疹が生じることが比較的多い薬剤でもあり使用上注意が必要です。
薬物治療に限界があり患者さんが我慢できない場合ブロック治療となりますが、レントゲンの透視下で70~100%エチルアルコールまたは高周波熱凝固法による神経ブロック法(神経破壊法)が行われることが多いです。局所麻酔薬による神経ブロックと異なり、エチルアルコールはかなりの長期間(半年~2年)痛む神経を一種殺した状態にして痛みをとります。実際の神経ブロック法としては、目より上の額の部分の痛みには眼窩上神経ブロック、眼の下の鼻根部の横の頬の部分の痛みには眼窩下神経ブロック、下顎の痛みにはおとがい神経ブロックなどをまず試みます。
眼窩下神経ブロックで効果がなくかつ痛みの範囲が広ければ上顎神経ブロック、下顎や下顎の歯肉部まで痛みが広ければ下顎神経ブロックを行います。この二つのブロックは私は神経破壊は行わずもっぱら局所麻酔薬で行っています。局所麻酔薬で何回かのブロックを行うとかなりの患者さんで痛みの軽減が得られます。さらにブロック中の痛みもあまりなくブロック後の神経の痺れも一時的なのでかなり好評です。
さらにもっと痛みの範囲が広範な場合は脳に近い卵円孔の部分で行うガッセル神経節ブロックが適応となります。いずれにしろ各種の三叉神経ブロックはこれらの手技に精通したペインクリニック医しかおこなえません。
また、手術療法としては開頭して圧迫されている血管が三叉神経を圧迫している状態を解除する手術(ジャネッタ手術)、またガンマナイフという放射線療法も試みられています。
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http://fujigaki.d2.r-cms.jp/topics_detail/id=13
2010-04-01T00:00:00+09:00
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は通常の神経痛、たとえば坐骨神経痛や三叉神経痛などとは別の種類の神経痛で、末梢神経の傷や炎症によって、損傷された神経から激しい痛みが長期にわたり生じるものです。CRPS(複合性局所疼痛症候群、Comprex Regional Pain Syndrome)と呼ばれます。
CRPSは次の二つのタイプに分類されています。ひとつは神経を損傷したとは考えられないつまり原因がわからずにある部位に激しい神経痛が生じて痛みが続く場合、これをタイプⅠ(骨折、ギブス固定、手術の後などに起こることが多いので、実際には何らかのかたちでその部位の神経に損傷を及ぼしていると考えられますが、全く原因になるようなことがなくても生じる場合も多い)とされ、一方、医療ミスで採血時や手術時に明らかに神経を傷つけたり、また帯状疱疹のウィルスにより神経に傷がついた場合(帯状疱疹後神経痛、トピックスに詳述)、手足の切断による幻肢痛、など神経に明らかに神経損傷した場合をタイプⅡに分類されています。タイプⅡで特に多いのが採血時針を深く刺しすぎて肘の部分の正中神経を損傷することです(採血6000回に1回の頻度で起こるとされています)。また近年ワクチン接種の際その部位が予想以上に腫れてすぐ近くの神経を圧迫することにより起こることがかなり報告されています(社会問題となった子宮頸がんワクチンによる長期に続く腕の痛みの原因の一つに挙げられています。それ以外にもちょっとしたことで神経を傷つけて発症することは意外と多いのです。
CRPSの症状は多くの場合、初期には浮腫が起こり、局所は熱を持ち、激しい痛みのために、患者さんはできるだけその場所を動かしません。次に数ヶ月の内に局所は逆に冷たくなり、筋肉や皮膚などの萎縮が起こり、激痛は持続し、重症ではアロディニアといって通常痛みに感じない刺激(下着がこすれる、扇風機の風があたる)でも痛みを感じるようになります。タイプⅠの方がタイプⅡよりも治癒しやすいと言われていますがいずれにしても短期間で治癒することは、受傷直後から適切な治療がなされた場合を除いてほとんどありません。
治療方法は消炎鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬、ノイロトロピンなどの薬を症状に応じての内服治療。レーザー光線、温冷交代浴、運動訓練などの理学療法が教科書的には挙げられますが実際はほとんど効果ありません。もっとも効果的な治療はできるだけ発症早期に神経ブロックを繰り返すことにつきます、痛みの場所への直接の神経ブロック、交感神経ブロック(上肢の場合は星状神経節ブロック、下肢の場合は腰部交感神経節ブロック)、硬膜外ブロック(特に急性期に行う)などです。慢性期に入れば神経ブロック治療は効果が落ち、かなりの期間が治療にかかります。また内服薬としてリリカ(プレガバリン)という神経障害性疼痛治療薬は、効果率60%以上で、今までのどの薬より鎮痛効果が期待できます。また、痛みが原因でうつ症状も有する患者さんは、神経因性疼痛にかなり効果を発揮するサインバルタ(線維筋痛症にも効果があります)がむしろリリカより著効する場合があります。あきらめないでください。
一般的に大きな問題として、CRPSの病名はペインクリニック医以外の医師のほとんどが知らず、従って治療法も知らず、CRPSを単なる痛みと考えて通常の鎮痛薬を投与しておけばそのうち治ると思い、一番肝心な受傷直後に適切な治療が行われない場合が多いのです。ペインクリニック医のところに患者さんが送られてきた時はほとんどの場合が、発症後数か月から数年たっていて、治療効果が出にくくなっている状態なのです。頚部や腰部の脊椎手術をして痛みが取れるどころか,益々ひどくなった患者さんが、CRPSの状態になっている方も多いのです。また、近年多い膝の内視鏡手術で起こることも報告されています。
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2010-04-01T00:00:00+09:00
脊椎椎間関節とは頚椎から腰椎、仙椎まで、上下の脊椎骨を固定し、また脊椎が前後屈や回旋するために必要な関節です。ひとつの脊椎骨に左右2個あります。
その椎間関節が加齢、骨粗鬆症などによって段々と変形して関節のかみ合わせが悪くなり痛みを生じると脊椎間関節症とよび、頸椎、胸椎、腰椎周辺に急性痛、慢性痛を起こします。
頚椎椎間関節症は、首を前後左右に動かすと痛みが増強し、耳介の後ろの盛り上がった骨(乳様突起)くらいから頚部の下方にかけて、損傷した椎間関節の部位を押すと圧痛が感じられます。寝違え(痛みの相談に既述)で関節を捻挫した痛みも頚椎椎間関節症の急性痛に入ります。
胸椎椎間関節症は、胸背部に痛みを生じ、特に、体動、寝返り、せき、深呼吸などで痛みが増強します。また、胸椎には一対ずつ肋骨がついているため、肋骨に沿った肋間神経を刺激して、脇腹やみぞおちまで痛みが走る場合が多いです。
腰椎椎間関節症は腰を後ろにそらしたときに痛みが増強し、腰の損傷した椎間関節部に一致して圧迫すると痛み(圧痛)が生じます(腰の真ん中にさわる骨を棘突起といいますが、それより3~4cm外側です)。急性痛の場合はいわゆるギックリ腰の症状です。この場合は痛みは激烈で、歩けない程の痛みもめずらしくありません。慢性の腰椎椎間関節症は慢性腰痛として感じられ、立ちっぱなしや激しい労働などで痛みは増強します。
それぞれの痛みの治療は、関節の痛みなのでトリガーポイント注射などの筋肉痛に効くブロックは通常は効果はあまりありません。硬膜外ブロックは、2~3回行えば大きな効果が得られる場合が多いです。その他にそれぞれの損傷した関節に対して、レントゲン透視下の椎間関節ブロック(ファセットブロック)が非常に有効です。さらに脊髄神経の後枝内側枝の高周波熱凝固法も有効な治療法です。
また、ブロック治療に併せて、鎮痛薬としては消炎鎮痛薬(ロキソニン、ボルタレンなど)、アセトアミノフェン、弱オピオイド(トラムセット配合錠、トラマールOD錠)、サインバルタなどの効果が期待できます。これらを少量ずつ2剤程度を併せて服用すると特に有効な場合が多いです。
頚部、胸部、腰部の急性痛、慢性痛の原因としてこの椎間関節症は結構多いです。]]>
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2010-03-19T00:00:00+09:00
肋間神経痛は比較的よく見られる痛みです。肋骨は胸椎(12個あります)に左右ひとつずつ付着して、胸郭を形成し、心臓、肺、肝臓を守り、呼吸をするのに重要な役割をになっています。その肋骨ひとつひとつの裏側(内側)の下縁に肋間神経が肋骨にそって肋間動静脈と束になって分布し、何らかの原因でその神経が刺激を受けた場合に肋間神経痛を生じます。したがって肋間神経痛は背中から胸の真ん中、みぞおちまで、体の半周をまわってどの部分でも痛みを感じます。体動、深呼吸、せき、など肋骨が大きく動くときに痛みが強くなりやすいことが特徴です。そのため、寝返りができない、普通の呼吸ができず小さな呼吸を行うため息苦しい感じがする、みぞおちの痛みを心臓が悪いのではないか、胃が痛いなどと考える患者さんが多くみられます。原因は多くが肋骨の付着部の胸椎の病変や炎症で起こります。
肋間神経痛をおこす原因疾患としては、胸椎椎間板ヘルニア、胸椎捻挫、高齢者に最近特に多い骨粗鬆症による胸椎の圧迫骨折や胸椎椎間関節症(胸椎がへしゃげて胸椎をつなぐ関節がぐらぐらの状態になる)、また、胸部の帯状疱疹痛などがあります。一方、まったく原因が不明の特発性の肋間神経痛もしばしばみられますが、この場合は痛みも軽く自然に短期間で治癒することが多いです。
また通常は痛みはないが突然発作的に電撃痛を誘発する肋間神経痛もあります。
治療は痛みが軽い場合はメコバラミン(メチコバール、活性型ビタミンB12で神経の傷を修復するビタミンです)の内服などで保存的に経過を見ますが、痛みが強い場合はまず原因を特定し、胸椎が原因ならば胸部硬膜外ブロック、また直接肋間神経痛を遮断する肋間神経ブロックなどを行う場合が多いです。肋間神経ブロックは肋骨の裏、下縁に肋間神経が血管と並行して走行していますので、肋骨にまず針(25~27ゲージ程度の細い針です)をあて、針先を下縁にずらして肋間神経付近に局所麻酔薬を注入して肋間神経をブロックする方法です。この時ステロイドホルモンを加えると効果が増強する場合が多いです。
内服薬としては先に述べたメコバラミンがありますが即効性はありません、消炎鎮痛薬(通常の痛み止め)はある程度以上の痛みには効かない場合(消炎鎮痛薬は神経痛にはあまり効果がない場合が多い)が多いです。
リリカ(プレガバリン)という神経痛治療薬、また最近でたトラムセット配合錠は消炎鎮痛薬に比べて効果が期待でき、即効性もあります。ただし副作用として、リリカは眠気、ふらつき、トラムセットは吐き気が服用初期に出やすいので、この薬の使用に習熟した先生に患者さんに合った量を処方してもらうことが肝心です。]]>
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2010-03-11T00:00:00+09:00
肩こり、首、肩の痛みとそれに伴う緊張型頭痛(筋・筋膜性疼痛症候群、トピックスに詳述)に苦しんでいる方は非常に多いですが、これらの痛みとこりに有効なブロック注射に肩甲背神経ブロックがあります。このブロックはほとんどのペインクリニックであまり行われていません。
このブロックの適応は、まず、前述した筋・筋膜性疼痛症候群(肩、首、頭まわりの筋肉のこりと痛みの病気の総称で、非常に多いです。そのうち頚部、肩甲部、肩のこりと痛みは頸肩腕症候群と呼ばれ、頭部の痛みは緊張型頭痛と呼ばれています)。さらに頸椎症、むち打ち、などです。
肩甲背神経は脊髄の第5頚神経から出て、ちょうど肩甲骨の内側を左右1本ずつ縦に背中の方へ走行し、肩甲挙筋と大、小の菱形筋の筋肉運動を支配しています。肩甲背神経は痛みを感じる知覚神経ではなく筋肉を動かす運動神経で直接痛みに関与はしていません。
しかし上記した疾患は、4~5kgある重い頭を支えるこれらの筋肉の異常緊張(持続痙攣とも言えます)がこりと痛みの原因ですので、このブロックを行いますと、トリガーポイント注射(痛点に行います)に比べ肩、頚部の筋肉(肩甲挙筋、菱形筋)のこりが強く柔らぎ、筋肉の血流が増加します。その結果、肩、肩甲部のみならず、頚部、頭痛、目の奥の痛み、こめかみの痛みまでがとれることが多いです。いかに首を支える頚部、背中の筋肉の緊張がこれらの痛みの元凶であるかを物語っていると思います。
当院では筋・筋膜性疼痛の患者さんにはまずトリガーポイント注射を行っていますが、効果があるがいまひとつのない患者さんに肩甲背神経ブロックを行うと、「トリガーポイント注射より、こちらの方がさらに効く。まず肩がスーと軽くなりポカポカしてきて、その後種々の痛みが消えて行く、何とも気持ちがいい。次にもし痛くなった時はトリガーポイント注射ではなく肩甲背神経ブロックをしてほしい」とおっしゃる患者さんが多いです。効果もトリガーポイント注射より強く長い様です。
手技はトリガーポイント注射に似ていますが、全くの別物で、肩甲背神経走行の真上にごく細い針で局所麻酔薬のブロックをします。ちよっとしたこつがいりますが、ほとんど痛くない比較的簡単なブロックです。また、星状神経節ブロックが著効する患者さんもおられます。肩こり、肩、首の痛み、頭痛でお悩みの方はぜひ来院してください。内服薬だけの治療との大きな差がわかると思います。]]>